【長編小説】越境【原稿用紙321枚分】
サークル: FRANZ AMEL
サークルHP:
発売日: 2018年07月29日 0時
ジャンル: 薬物 SF
原稿用紙約321枚分長編小説のtxt、PDFファイルです。
「もう駄目だと思った。剣呑な予感は杞憂でも強迫観念でもなく、宇宙万有の真諦のように動かしがたい事実なのだろう。これは理性から発せられるエッセンスや理念のように、なるべくして成った事物、つまりリアルという感性のフィルターを通した僕たち人間の共通了解である現実世界なのだ。夢でも念慮、妄想でもない。僕は今、人を酔わせる類のものを、酒や麻薬を身体に取り込んでいない。感覚はとてもはっきりしている。現実遊離感や離人感もない。僕は現実という概念の中にいる。一つの街をふらふらと歩いている。車や人々が行き交うのが見える。太陽が紫外線を照射し、道路や歩道のコンクリートが熱を持っているのがわかる。五月の半ばとは思えないほどの暑さの中で車は排気ガスを垂れ流し、人間は額から流れる汗を手の甲やシャツで拭いながら、今というこの瞬間を生きていた」
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